【本】ウンコはどこから来て、どこへ行くのか 人糞地理学ことはじめ / 湯澤規子

超〜面白かった!最近トイレを新しくした親が「ウンコの様子が見えなくなった」と言っていたのを思い出した。ウンコの様子で体の不調を確認しているんだと。

見えなくすることで、汚いイメージが肥大していく。「不潔」は時代の価値観によって生み出されている。

タイトルがゴーギャンから来たのびっくりしたよ。(常識か?)小タイトルも可笑しくて、「ウンコからの手紙」とか、一見関係あるのか?と思いそうな「手と女性」というのも興味深い。もちろん関係ある。

ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない…」のと同じく、「ウンコは汚物でしかないと思うことをやめることから出発すると、世界は違って見えてくる。」

スコッティについても言及があったよ。スコット・ペーパー・カンパニーは老舗企業だったんだね。

あと1964年の東京オリンピックと下水道との関連も興味深く読んだ。開催が決定した1959年、それまで脇にやられていた下水道整備の優先順位がぐんと上がったと。外の批判を気にするということは良くも悪くも優先順位を狂わせる。

これ以降、均質化した目指すべき都会が出来上がっていく。

トイレットペーパー狂騒曲一九七三&二〇二〇は無くなることの恐怖、見ずに済んでいた汚物へのイメージの深層心理が働いたのかもしれない。ところで国によっては、トイレットペーパーは流さないんだけど、忘れちゃって便器にポイっとしてしまってからア!というあれこれも楽しかったな〜。海外行きたい。

ウンコというかトイレに昔から興味があって、海外のトイレ大好き。変わったトイレが名物ってカフェや店もあるよね。

 

【ドラマ】保健教師アン・ウニョン / イ・ギョンミ

Netflix

韓国 2020

S1E6

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面白かった。「漢字は読めるのか?」「読めん。」で会話が終わるとこがなんかいい。なんか空気みたいに。ぼんやり多分そこにある?ゼリーあるな〜って共通認識がゆるくて、ウニョンの思考は完全にウニョンのもの。映像化ならでは。

園芸の先生はあんまし防御力がなくて(笑)ただの「変なやつ」になってしまったのが残念。そこもゆるくていいのだけど。あの植物、サワードゥみたいだったな。

興味深いなと思うのは、人間が知らず知らずのうちに自分に課している限界値ではなくて、人間ではないものが敷いている限界値によって人間は守られているのだという部分がある事。それがなければ悪霊の如く醜い部分が人間から表出する。

 

【本】大都会の愛し方 / パク・サンヨン

韓国の人のなまえって、日本語やアルファベットの言語とも違って私は男か女かわからないので、読みはじめはいつも混乱して、でもそんなのハングルだけだからおもろくて、つい読んじゃう韓国文学。

キャラクターの性別が決まってることが重要な文脈とそうでもないけどわかんないと状況が理解しにくい場合があって、やっぱりページを行ったり来たりする。日本語ってはっきり書かない。

、ということを『大都会の愛し方』の冒頭で思った。

 

読み終わってのいちばんの疑問、梨泰院とは? →→ Netflixにいくべきか?

梨泰院は六本木へのアクセス、渋谷ほどの乱雑なイメージ。

改めて、面白かった。独白の言ってることと意味するところがするする理解できる感じ、とても気持ちがいい。どうでもいいけど "大都市"は経済が活発であること、"大都会"は人口と文化の広がりってイメージがある。でもどっちでもいいみたい。

例えば未来から来たドラえもんは大都市、パク・サンヨンが乗るタクシーが走ってるのは大都会。

なんとなく最後の小説は40代の「俺」かと予想していたけど外れた。著者は1988年生まれだったんだね。

ヨンの「〜から、俺は本を一冊出した。」って音楽アルバムみたいだなと思った。文字よりも生々しい感じがして。マドンナみたいにさ(笑) 毎年は出ない。数年に一枚。

製作する過程も音楽も心から望んでるって感じのショーン・メンデスじゃーない。

 

【映画】Like a Boss / Miguel Arteta

Netflix

USA 2020

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面白かった〜。化粧会社の乗っ取りがやって来た!うんことか下のジョークばっか飛ばしてる親友2人がコスメ業界で奮闘する。「私はボスになりたかっただけ」今起きてることの焼き直しっぽくはあるんだけど、テンポが良いので楽しい。恋愛とかなし。

邦題がコスメティック・ウォーらしいけど安易に"争い"ってタイトルに付けるの危険だと思う。劇中ではっきり拒否してるし。

悪役ハイヒール女王のサルマ・ハエックが最高。

親友2人が赤のクラシック車に乗ってるとこも好き。冒頭以外出てこなくなったのは残念。

「ホームカミングでのセックスは絶対避けて!」「妊娠したら私に言って!」笑

 

【本】同性婚論争 「家族」をめぐるアメリカの文化戦争 / 小泉明子

慶應義塾大学出版会

2020/10

 

すんごく面白い。最後の争点となった連邦最高裁まで読み進めてるんだけど、あのルース・ギンズバーグ判事が登場する。9人のメンバーの集合写真もあって、『ビリーブ』のメンバーや!興奮したw 笑っている和やかな雰囲気が意外。(でもギンズバーグは政治上の意見対立を人間関係に持ち込む人ではなかった。)

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1930年代からの歴史的過程を追ってきたことで頭のなかで応援する気持ちが高まって、最高裁判決の結果に知っているはずなのに驚いた。9人中4人もの反対派(保守派)がいることに。2015年の時点でギリギリだった。

ハワイに反応してしまうお年頃(ハワイファイブオーにハマっている)、『同性婚論争』でハワイ州最高裁は「同性婚を認めないことは性差別にあたる」と判決を出す。全米が衝撃した1993年の判決は世論の6,7割の反対や宗教右派の大金を注ぎ込んだキャンペーンにより覆される。住民の6割は「婚姻は男女の結びつき」を支持していた。ファイブオーが製作された年はどうだっただろう。

そもそも「婚姻する権利とは何か」の言及には、大好きな映画『ラビング』の裁判にフォーカスしている。リチャードは訴える。「婚姻する自由は、自由な市民の幸福追求にとって不可欠な個人的権利の一つであると長く認められてきた……」さまざまな裁判の記録等を原文訳と要約でまとめながら『同性婚論争』は進む。

ほんと映画な権利運動と宗教右派のシーソーゲームが凄く面白い。他人事じゃないんだけど。論争の蓄積が今のアメリカなのだからめちゃくちゃリスペクト。日本は「削除しておきました」なんだから…

いいも悪いもなく法廷をただただ見る(超編集)ラテンビート映画祭『家庭裁判所 第3H法廷』を想起した。言葉が行き交う場だから。

 

【ドラマ】あなたが遺した混沌 El desorden que dejas

Netflix

スペインドラマ 2020

S1E8

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夫とともに彼の故郷へ越してきたラケルはちょうど空いた教職に就くが生徒は反抗的。原因は前任者にあるらしく…。ガリシア地方はスペインにとって特異な土地なんだろうか。「ここはガリシア」ダークな雰囲気。

演技が要のドラマ面白かった。ラケル役に『ジュリエッタ』や『誰もがそれを知っている』のインマ・クエスタ、反抗的な生徒にドラマ『エリート』のArón Piper 他に知っている顔もちらほら。アーロンは金持ちの息子役が板についてきた。笑

ラケルが赴任校に着いたとき、ある生徒の主張を目にする。女性は弱者だと決めつける社会に対しての女生徒の批判は担任教師が勧めた本がきっかけだったという。そばで見ていた他の教師が言う。「皆がああじゃない。残りはただの10代。」ラケルは「ああいう」生徒の受け持ちになる。

そもそも夫の出身地って知らない土地も同然だ。「なぜ文学は無用か?」の出題の意図は「お前は黙ってろ」であり、ラケル"達"が最後に「ああいう」生徒に教師として伝えるのが印象的。「本を読み続けて」

そして「ああいう」生徒達へ向けて、またはどんなでも構わない、ラケルは書く。

原作の小説があるらしい。読みたいな。

作中、Xoel Lópezのアルバム「Si Mi Rayo Te Alcanzara」から多くの曲が使われていて、アルバムを聴くとメロウからポップまで幅広くギャップに驚く。いい。おすすめ。

 

映画 TIFF 『ティティ』Titi

Ida Panahandeh
イラン
東京国際映画祭2020

 

とても面白かった。イラン映画にサムライの気迫を視るとは思わなかったな。(ツイートでは侍の太刀と書いた)ソレを懐に抱く、火の中に手を差し込む、という太刀筋が見事だった。

病院の掃除婦が迷った入院患者に手を貸す、そんなシーンから始まる物語は、ティティの眼孔と動きから怪しく見える。観察する姿は狡猾そうな女、とまで思わせる。しかし男たちの評価はそうではない。

男達はだれのこともよく見ようとしない。あるのは自分だけ。「断片だけ見たって結局わからないだろ」何もみやしないくせに。

ティティは夫となる人物のことをよくよくわかっている。ティティが"認めた"人物を保護しようとするのは自由に活躍させるためだ。"学問の自由"とも通じる。

そういえば、イブラヒムはどうやってティティから赤子を取り上げることに成功したのだろう。直接的な映像はカットされている。彼の説得が成功したとは思えないが。。

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ポスターを撮ってたので上げる。大きな籠の花やアヒルを両手に抱えてティティが現れたり(去っていったり)、ウサギの毛に埋もれるティティの指とか印象的だった。箱舟を創ったノア(創世記)を崇拝していた彼女は良き運び人になろうとした。

ウサギとアヒル抱えてざくざく歩いてくるティティが好きだった。