【本】キッズライクアス / ヒラリー・レイル

訳者 林真紀

自閉症スペクトラム障害の高校生が親の都合で米国からフランスの「普通の」学校へ転校することになる間の物語。両親が彼を特別だと気付いた時、マーティン曰く「両親は僕に介入しなければならなくなった。なんて恐ろしい言葉だろう。あまりにも暴力的だ。」

その一言が忘れられない。「介入しなければならなくなった」と。マーティンの愛好するプルーストの「失われた時を求めて」が現実と、超リアルな夢想と呼応して互いの心の距離を伸び縮みさせる役割を果たす。

話は逸れるけど、「失われた時を求めて」の難解さをはぎ取ることを求められて、角田光代さんがあとがきにこう書いてる。「小説を読むということは、文体に触れることだと私は思っている。文体に触れるというのは、作者に触れ、その声を耳にするということだ。」

『キッズライクアス』のあとに『失われた時を求めて』を手に取ったので、"ぼく"にマーティンを重ねて読んだ。逆なのが可笑しい。誰を指しているのかこんがらがってたマーティンみたいだ。