タゴール・ソングス

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監督:佐々木美佳

日本 2019年製作

 

 

緊急事態宣言後(解除の気分にはなれないのでこういう言い方になる)初映画館!館内のベンガル音楽がとても心地よい。

 

鑑賞後、歌うのが上手い人は詩を読むのもうまい!と唸った。

タゴールを心から愛する先生は本当に素晴らしい弟子と出逢ったよね。

 

 

2500曲あまりも詩を詠んだタゴールの歌をベンガルの人が紹介する時、「有名な曲」と前置きするのが印象的で、しかし「有名な曲」はいくつもいくつも人の数だけあるのだった。

 

なので、「天気がいいから、自然の歌にしよう」と歌い手が言って、ギターと歌い出す。そういう気軽さがいい。または、愛とは何かを学ぶ日は「つらい時」に寄り添う歌を。

 

超裕福な家に生まれたタゴールは生活のために働く必要はなかったけれど、「ソングス」から派生していった意味は市井のひとびとに語られ変化し生活の中に溶け込んでいる。教育とは知識を与え個人の能力を伸ばすことであるが、人の声を借りて詩がその役割を得ている。不思議な存在をしみじみと感じた。

 

私なんてタゴールどころか昨日労働保険法を朗読してしまったからな。ひとりで。

 

晩年のタゴールと日本は難しい関係になったと聞いているが、『タゴール・ソングス』の後半に日本(とはいえ軽井沢より東京が多かった)が絡んでくる。"コンクリート"出身のアウトサイダーは自然の描写を好んだが渋谷交差点に"ひとり"でいる姿に最も「彼の世界観」をみた。宇宙にこだまする浮遊感とでも言おうか。

 

タゴール・ソングスを背中合わせに先生と生徒が歌う場面がとても良かった。歌い終わると一節を詠んで、あらためてタゴールの詩に敬嘆する先生。ずぅっと、尽きないんだろうなぁ。

 

インドは国家が流れる時の反応が日本とまるで違う。映像のとき「ベンガル人だから特別に思えて」かもしれないけど。タゴール・ソングスは聞いている限りだと賛美と畏怖、励まし。貶める言葉を使ってない。ふわっふわしてるなぁとも思う。そこがいい。

 

懐かしいコルカタシャッター街(本屋街)で折り畳み傘を買ったことを思い出して、それを無くしちゃってしょうがなく使ってる折り畳み傘を今日忘れてきたことに気付いた。ほんと私…

 

もうひとつ。コルカタの本屋街でタゴールの詩集を買い求める場面、懐かしくて。じっと見ていると店員さんすっ飛んでくるよね(笑) 「何が必要?」って。目的もなく本を眺めにくる客なんていないって思ってる。ウィンドウショッピングには向かないw

 

ザ・キング 永遠の君主』で老女官が朝鮮戦争が勃発する直前重大な判断をしなければならなくなったとき「とっさに一冊の詩集だけを手に取った。」と言っていたのも思い出した。>タゴール・ソングス

 

映画館のストレスは全くなかったけど、カメラが人に寄りすぎるとめちゃくちゃストレス。目を背けちゃう。確実に変わったわ。

 

あと安いマスクしてると眼鏡が曇って視界が白くなるので微妙にずらしてスクリーン見なきゃいけない。

 

3ヶ月ぶりに途中下車したら楽しくって寝付けない。当分は大人しくしているつもりだけど、お出かけは楽しいなって気持ち。