【本】『構築の人、ジャン・プルーヴェ』早間玲子

https://www.msz.co.jp/book/detail/08842/

めちゃくちゃ面白かった。インタビュー/会話として記録されたものを文字に起こし校正したプルーヴェが語るⅠ部、プルーヴェの強く心に残る言葉や講演のスピーチ、さまざまな家具や建築作品の仔細な注釈と写真のⅡ部、世界一詳しい年表から成る。素晴らしい本だった。

むちゃ高いんだよねー。でも買ってよかった。大型本なんだけどデザインと製本の巧妙か?片手で持てる装丁もすごーく良い。

編者である早間玲子は1960年代の終わり頃からプルーヴェのアトリエに勤める。日本の建築界は男性が多数を占めているが、フランスで活躍する日本人女性がいたのは知らなかった。6年半ののち独立にあたってプルーヴェが「フランスの方が日本人女性にとって働きやすいだろう」と助言したというのが興味深い。(結果、それが最善だった。)

日本語で書かれた建築についての本を見渡してみても女性著者は少ない。もっと読みたい!プルーヴェが繰り返し「建築の分野だけが統一された生産活動を構築してこれなかった」と語るが、日本男性がまったく女性と協働してこなかった結果についても同じだと言える。

プルーヴェの唱える「工業化」や実験思考、単構造、即日性などの理論は母数が大きくなるほど進化が期待できる。(多分そう言う感じのこと)は初めなかなか理解が難しかったけれど、最後には納得できた。単純なことが非常に難しいこともよくわかる。

それっぽいことをジャン・プルーヴェっぽく言うと、ある程度の長さがなければハードバックは持ちにくくかつ読みにくい。小説をまずハードカバーで出版するのは何故だろう。軽い方が書店員も有難いだろうに。Kindleには軽量を求めるのに紙は重くてもかまわない。理解できないことだ。

様々な分野の工業化の起こりに偶然性があるように、プルーヴェの工房が先進技術を取り入れて作品がどんどん進化していく様は『スマートマシンはこうして思考する』の序盤を想起させるものがあった。

そいで、早間玲子氏の「おわりに」がまた最高に面白いんだけど、脇目もふらず追っかけたエピソードには岩崎葉子著『サルゴフリー 店は誰のものか』のエピソードとも共通する。凄えなマジで。

https://www.msz.co.jp/topics/08842/