『百日紅』

ファーストショットで目の前に広がった風景、「江戸に来た!」と思った。素晴らしかった。

浮世絵っておもしろい。中でも、ものすごくシンプルなのに見飽きない線ってのがあって、それってなんだろう、と思ってたけど『百日紅』の中で面白いことは全部体験して吸収する。そして書く時は自らの経験値でもって稲妻のように”降りて”来るのを待つ。その勢いと熟練が合わさっている魅力があるんだと教えられた。


べらんめぇ口調にロックって合う。強風が吹いて、お栄が全速で爆走するところなんか、あの曲じゃなきゃ!って感じしたし、滴り落ちる大粒の汗はそういう量だった。

「けっ くだらねぇ!」と言葉と行動がちぐはぐな北斎。いやくだらないからこそ足が向くのかな?

ひとは見て聞いたものしかきちんと心に取り込めない、ということが冒頭の「あ、犬のクソ」女!で描かれてるとこが江戸っぽく洒落てていいよね(笑) で、様々な面白いことを聞きたい知りたい北斎は病弱な娘のことが怖い。それは彼が取り込むのが上手いから、なんだと思う。

お栄とお猶が江戸散歩するところがすごく好き。一緒に観光しているような心地になった。橋の上の往来、舟に乗って橋を潜るとこなんてまるで3Dのようで、超楽しかった!一面の白を踏む音、二人の肌が摩るカサカサした感触も素晴らしかったなぁ。

むやみに犬を撫でたりしないのは、北斎親子らしい可愛がり方。原作読んでみようかな。