【本】カエサル 内乱の時代を駆けぬけた政治家 小池和子

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めちゃくちゃ面白かったーー。ローマの共和政や社会的背景、周囲の性格や動向を詳しく描くことでカエサルの輪郭をくっきりと浮かび上がらせる。文章力やエピソードも唸る面白さ。非常に統率されている本だった。

統率とは集団をまとめる率いること。

統率されていた、と表現したのは、「だが、本書では深く立ち入らないでおこう。」ってゆう公私の区別じゃないけど、カエサルのある面とある面の区別をきっちり示すところ。

小池さんの話し方(書き方)が好きだな〜。言葉の選び方も。名家の出身でカエサルを憎んでいた格下の「クローディウスは狂暴で無節操で自分の欲望のままに突き進む人間ではあったが、民衆には非常に人気があった。」とか(笑)

とにかく同名の別人が多すぎるのが厄介だが、(クラッススの息子はクラッスス)そういうものと読み進めていくといい。厄介なのはむしろ見覚えがある名前がちょっと見かけただけなのか重要な人物だったのかもわからなくなること。猫かネズミか、ネズミか猫か。

地図の地名がローマ方言?なのも楽しい。統治者が変われば読み方も変わるって当たり前だけど面白い。〜ニア、〜ウム、ーー伸ばしがちなとこも可愛い。

ローマの役職は癒着を防ぐ為に任期が1年なんだけど、カエサルのフットワークの軽さ、剛健だなぁ。。あとローマ人の誇りである共和政と暗殺は表裏一体なところがあって(すぐ殺すよな)、共和政を崩壊させたカエサルが複数人に殺害されるが、暗殺者たちはただちに「次の行動」をしなかった、というのも終わりを思わせる。

カエサルが巧みだったのは如何に人を殺さずに能力を殺すかという点だったのかもしれない。(同胞に限る)

戦争は工事でもある。橋を渡しては壊し、壁を築いては壊し、属州のローマ化は徹底的に壊されてから建てられる。

カエサルによるブリタンニアブリテン島)遠征は、秀吉の朝鮮出兵にかかる侵略の構想を想起させた。前者に大義名分はあったのだろうが、行き過ぎた、望み過ぎた戦争に思えた。

生き抜いたというより、駆けぬけたんだよなぁ、カエサルは。。

副官ラビエーヌス!誰か作画してください。あとね、キケローの弟でカエサルの副官クィーントゥス推し!キケローがふらふらふらふら立場を悩むのでカエサル大好きクィーントゥスが振り回されるの巻。

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