シャトーブリアンからの手紙 La mer a l'aube

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シビアな戦争映画とは対極の、死にゆく者一人ひとりに焦点を当てた物語。豪奢な部屋で軍服に身を包んだドイツ側の会話は丁寧すぎるほどだけれど、かと思えば発端となる暗殺のシーンはずっこけるほどあっさりとしている。

全体に緊迫感が薄く、感動を誘う場面である手紙を書くところはなんだか小学生の作文教室のような、彼らの心の声があの小屋のなかをざわざわと騒がしいほど飛び交っていた。本当は誰も文字なんか書いてなくて紙は白紙なんじゃないかと思うくらい誰も彼もが黙って書かない(笑)

韓国映画だったら、みんな涙しながら大仰な曲をバックに描きそうな一大感動シーンだけれど(それがダメってわけではないよ勿論)、フランス人はそうじゃない。

あまりに詩の感嘆に溢れたつぶやきであるので、書き留められた紙よりも空気中に漂う言葉たちのほうが重く存在感が強いような感覚さえ覚えた。

音楽が添えてあるだけ、という扱いになっていたのはちょっと残念。もっと場面に応じて主張していても良かった気がする。
まぁそれは好みの問題だけど。

それにしても、可愛い&格好いい男たちがたくさんでてきて目が楽しい。ドイツ将校にあっかんべをしたり、マラソン大会でタンクトップの男たちが狭い距離を走り回ったりしている様は見ていてにこにこしちゃうね。

ドイツとともに公務員仕事をこなしつつ、上に噛みついたり労働者に責められたりして可哀想なフランス将校のひと、名前なんて言うんだろう。金髪に丸眼鏡が可愛かったなぁ。顔もちっちゃくてペレー帽の合ってないのがまた良い!

神父役のJean-Pierre Darroussin はイザベル・ユペールがめちゃんこキュートな「間奏曲はパリで」の夫役のひと。この人の顔はなんか安心する。すごくすき。

フランス侵攻やドイツ崩壊の映画は数あれど、ドイツがフランスを占領している”領土内”の模様を描いているのは珍しく、とても興味深かった。そしてまたその時期のドイツが一丸となりきれていないために起こる仲間内の小さな衝突や人の生死を追った話でもあった。