ツィリ Tsili

これは難しい映画だった。少なくてもあらすじくらいは頭に入れたほうがいいと思う。
でもね、原作の本は読んだことがないのでどういうアレンジかもわからないけど、本の中の好きな部分を映像化して、あとの〆はナレーション(同じ文章を二度話すという奇怪さ!)と当時のフィルムでやっつけました☆ってのは好きじゃない。

どうせなら『行きる』くらい潔く3時間超えの大作にすれば良かったのに。まぁそうなると見ない可能性は高いけど。

途中、固定されたカメラが上下に動くシーンがあって、あそこだけとても異質に感じた。男から女への推移がスローモーションになっていた。それとツィリの動きがRotRのゴラムのようで、やはり長く森に暮らしているとああいう動きになるのかな(笑)

出演俳優インタビューより、
この映画は失われたユダヤ人の村々を、いまギリギリ残っている言語であるイディッシュ語を使って撮ったとのこと。原作はヘブライ語で書かれているそうだが、本来話されていた言語で撮られたということは興味深い。

アモス・ギタイ監督の撮影方法も独特で、いつのまにかカメラが回っていて、俳優が自由に演技を意識していない場面があったと。瓶を投げて遊んでいる休憩時間っぽい雰囲気の、あの場面。

二人一役のツィリは序盤クラゲのような踊りをしたり、ひたすらに走ったり、エルサレムへ向かう道で並んで同じ画に収まったりする。家族に捨て置かれる前のツィリは奔放な性格だったのかもしれない。家を守れなかったツィリは夜空を見上げて、初めて外の暗闇に触れたという。その出来事は忘れられない強烈な体験だったろう。